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2006年11月のことば

  • 執筆者の写真: uemurabunko
    uemurabunko
  • 2006年10月31日
  • 読了時間: 1分

更新日:2月15日

和辻哲郎の名著『風土』に、中国を論じる一節があります。和辻は、揚子江を旅して、その「単調にして空漠な」風景に驚き、そのような風土に生きる人間の「意志の持続」などの特徴を指摘しました。昭和四年のことです。


 これを読んだとき、私は、ロシアのお話を思い出しました。果てのない平原の一画を耕すロシアの農民の中には、ある日突然、クワを捨てて地平線へと歩き出し、死が歩みを止めるまで、とりつかれたように歩き続ける者がいる、というお話です。本当なのかどうか、わかりません。しかし、以前に旅した風景を思い出すと、人間の意地によってのみ、生き続けられる風土の存在を、強く実感するのです。


 和辻に見えたのは、そのような人間の意地でしょう。そして私は、ロシアだけではなく、ポーランド南東部のガリシア地方を訪れたときにも、この意地を感じました。うねうねと続く大地の褶曲が、際限ない丘の連なりを繰り返していく地方です。空漠たる大地に抗うのは、人間の意地か哀しさか。ロシアの音楽、スラ ブの音楽の風土を、和辻さんに表現してもらいたかった、とつくづく思います。

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