top of page

2007年4月のことば

三月に台湾に行ってきました。台北の中心街にタイペイ・アイという劇場があり、子ども連れも気軽に、京劇などを楽しむことができます。ちょうど旧正月でしたので、獅子舞を見せてもらえたり、お祝いのお餅やおもちゃなども配られたりと、心配りの行き届いた公演でした。 京劇の演目は、八仙過海です。宴会帰りの仙人たちと海の仙女との「喧嘩」なのですが、殺伐としたものではなく、衣装も振舞も、とても美しく完成されています。思い返しますに、この演劇は純粋に形式の美を見せるもので、内容は脇役にすぎず、理屈を考えたりしないで、気の流れを楽しむものなのでしょう。演者は いつも動いていて、ひたすらに流れるように形が変わっていきます。すべての気合いは、スーッ、ハァッという二つの感覚で構成され、それぞれの振舞にも公演の全体にも、この気の流れが表現されています。 これが「東洋的」なるものなのでしょうか。西洋の理性と東洋の感性、西洋の思想と東洋の気、キリスト教と仏 教、武道など、あれこれと連想が止まらなくなります。台湾に行って「東洋」を再発見した気分です。

 

​COPYRICHT(C)合同会社植村文庫 ALL RIGHTS RESERVED
bottom of page