西田さんの本を、今も読んでいます。西田さんは昔の京大の哲学の先生で、昭和の戦前期には、「京都学派」と呼 ばれるお弟子さんたちを育てられました。高坂正顕、高山岩男、鈴木成高、三木清、田辺元など、とても水準の高いお弟子さんたちです。ただし、「京都学派」 と呼ばれたとはいえ、京都出身の人は下村寅太郎先生くらいで、他の方は全国各地のご出身です。そしてそのことは、それぞれが書かれたものを読むと、一目瞭 然にも感じます。西田さんも含めて、皆さん誠実で力強いのですが、盛り上がる気持ちの勢いがはずみすぎるように思います。つまり、文化的ではなさすぎると言うか、まじめすぎるのです。
それがもちろん長所なのですが、どうにも馴染みにくいところでもあります。特に田辺さんがそうです。しかしまた、このような人たちが京都に来て、 京都で活躍されるから、京都は盛り上がったのでしょう。さまざまな性格が、矛盾して対立しながら一緒にいるところに、おもしろいものは生まれるというのが、西田さんの哲学でした。京都の町がそのような創造の場所であることを、京都学派の人々は証明し、未来にも希望しておられたのかもしれません。