先月に引き続き、社交について考えてみましょう。社交の場が意味を持つのは、そこに参加する人々が、そこで存在を認められ、尊重される場合だと思います。そしてまた、そこに参加する他の人々 の存在を認め、評価する場合だと思います。自分は尊重されたいし、他の人は評価したい、というのは、何かとても自己中心的にも聞こえます。そしてもちろん、あまりに極端であればそうなのでしょう。ただし、適度に尊重され、節度をもって評価することは、人間の意味のある関係を作り出していくのに、とても重要なことなのではないかと思います。
社交は一人ではできません。楽しくなければ社交とは言えません。適度さと節度とを上手に調節できることが、社交を楽しむ秘訣でしょうし、そのような調節能力を育て、あるいは発揮できる仕組みを考えていくことが、社交的な社会を作り上げていく秘訣でしょう。はるか昔、山崎正和さんの「柔らかい個人主義の誕 生」を読んで、社交の意味が深く掘り下げられていることに感銘を受けたことを思い出します。山崎さんの本は、二十年以上前から、この現在にまで語りかけている、まさに名著なのだと思います。