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2010年1月のことば

新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 今年は初詣に、東寺にお参りに行ってきました。東寺というのは京都駅の南側、ひときわ高い五重塔のそびえるお寺で、弘法大師空海のお寺です。私はそのすぐ近くで生まれ育ったのですが、久しぶりに、五重塔内陣や講堂、金堂まで拝観し、お参りしてきました。 東寺を代表するのは五重塔なのですが、私にとって最も印象的であるのは、むしろ講堂の立体曼荼羅です。こちらには、諸仏二十一体が立体的に配置され、おそらくはミクロの秩序から宇宙の秩序までをも象徴し、それらの秩序を鎮護しています。諸仏それぞれが自らの役割を果たし、諸仏の組み合わせが講堂の大きな空間を構成し、何もなかったところに意味のあるコスモスが立ち上げられています。これを発想した人間の側から見れば、その大きさが感じ取れる企画であり、まさにこれこそが、建築と呼ぶべきものなのだと思います。 

 もちろん、ぼんやりと諸仏それぞれに親しむのも魅力的ですし、ふと気付いて、あまりの混雑にびっくりすることもあります。いずれにせよ、これは密教の発想なのか、空海の発想なのか、日本の何かの感覚の現われなのか。私は、とても興味を感じています。この諸仏の配置による空間の構成から私が強く連想するのは、なぜだかわかりませんが、囲碁の石の配置による空間の構成なのです。

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