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2010年12月のことば

今年の京都は、夏からいきなり冬となり、戸惑っているうちに師走になった、そんな感じです。そしてなぜか、紅葉はきわめて美しく、あちこちの人出も多いように感じます。 

 さて、京都の町にいると、いつも山に囲まれていて、私は妙に安心してしまったりします。逆に言えば、山に囲まれていない風景に接すると、どうにも落ち着かず、どちらに向いていいのか、困ってしまったりするのです。もしかしたら京都の町は、まるごと劇場の舞台なのかもしれません。山の木々がお客さんで、京都の人間は出演者とスタッフ。そう考えていくと、京都人気質は演劇的ではないかとも思えてきます。京都人は、京都人を演じるのが好きなのではないか、ということです。しかしまた、五山の送り火では、山々が演劇空間となりますので、町と山とは演劇的に交流して、一年を過ごしているのかもしれません。 

 もちろん昔は、町は戦火や天災に苦しみましたし、山の中には僧兵や狼もいて、現在とは雰囲気や切迫性も違ったことでしょう。しかしそれもまた、演劇と宗教の関係など考えてみると、違和感なくつながるように、私には思えるのです。

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