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2016年12月のことば

  • 執筆者の写真: uemurabunko
    uemurabunko
  • 4月13日
  • 読了時間: 1分

12月に入り、すっかり冬めいています。抜群に綺麗だった今年の紅葉も、少しずつ終了の気配です。そして改めて、紅葉は本当に美しいと痛感しました。美しい風景を見て暮らせることは、心をそっと広げてくれます。


 寒くなるとともに、なぜだか昔のことが思い起こされます。もう四半世紀も前のこと、奈良県の大峰山脈に一人で登山に行き、稜線できつい雪に降られて、装備不足ですぐ下山したことがありました。雪がぼたぼたと降り注ぎ、風がうなりを上げる稜線から、里へとずんずん降りていく時、歩いている細い尾根に生えた木々の紅葉は、心にいろいろな振り返りを促すものでした。冬山対策をしておけばよかった、時間配分を間違えた、万事うっかりして手抜かりだった、などなど。秋の大峰の美しい紅葉は、ただ静かに輝いていて、その堂々とした様子に、こそこそと下山する自分の恥ずかしさを対比させていたのです。


 里に下りれば秋の景色。帰りの電車に乗れば、高校生たちが歓談しており、あの山の上の木々はどうしているかと、そんなことばかり考えていました。

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